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2006年5月14日 (日)

つくるから買うへ

ここひと月くらい、実に25年ぶりに自転車熱が再発して、当時購入した自転車をリニューアルするにあたり、
ネットやら雑誌やらからいろんな情報を入手して、今のスポーツ自転車をとりまく環境がどうなっているのか
まとめて把握することになりました。

で、一息ついて俯瞰すると自分の本職である住宅(設計)と同じような流れがあることに気付きました。
それが「つくる」から「買う」への変化です。

1970年代後半、自転車の最大の醍醐味は「オーダー」でした。
フレームの寸法から素材、接合部品などすべて指定してこの世に1台だけの自転車をつくること。
もちろん各部パーツは既製品から選ぶのですが、そこにも「通好み」のようなものがあって、
そのひとの審美眼を問われるところがありました。

住宅も、以前は施主は知り合いの工務店に直に発注することが多く、間取りを決めていくにあたっては
やはりある程度の知識は必要で、仕様を決めていくにもひとつひとつ判断しなければなりませんでした。

今、日本はスポークバイクのブームが来ようとしています。
MTBブームからクロスバイクに流れたユーザーが、本格的なロードバイクを購入するようになってきました。
あまり自転車のこともわからないようなひとが、何十万もするモデルをポンポン買ったりしている。
それは、自転車に対する評価が上がってきたということもありますが、
供給側がブランドをわかりやすく整理して、自転車をトータルな商品として整え、
購入者に手間がからないように、すべてお膳立てしてあげたことが大きいのではないかと思います。

つまり購入者が頭をひねって(それが楽しいのですが)ショップと膝付き合わせて「つくりあげる」かたちから
ブランドと値段を見てぱっと判断して「買ってしまう」かたちに変わったということです。

住宅は今や住宅メーカーの独壇場で、それは手取り足取りのストレスのかからないサービスによるところが大きいです。
建築家による住宅も一般雑誌に取り上げられるようになり、施主との距離は縮まってきていますが、
さすがに住宅メーカーほど規格化はされませんので(それがいいところなのですが)ストレスフリーという
ところからはまだ遠く、それがいまひとつ施主から建築家を遠ざけている要因なのかもしれません。
わかりやすいイメージを打ち出すという点では、手塚夫妻、納屋兄弟らが一歩進んだ動きをしています。

さて、まず自転車について、自分はどういう立場をとっているのか。
あくまでユーザーなのでプロフェッションとしている住宅設計とイコールではありませんが、
アルミやカーボンフレームが主体となった現在、オーダーフレームというのは現実的ではないので
一からつくるのではなく、ある程度のグレードの完成車を買って、それに乗りながらいろんなところを
自分なりにかえていくのが、低リスクでリーズナブルな手法ではないかと思っています。
実際今乗っているロードバイクは、腕のいい国内メーカーのフレームに、当時国産の最上機種を組み合わせた
レディメード製品で、25年経った今でもガタが出ずに使えています。かたちも古ぼけたりはしていません。

今であればビアンキの06’VIA NIRONE-7ALU-MIX 9Sx3S Liquigas-Bianchi Teamや
PINARELLOのANGLIRU05’あたりの、実売10万円台前半で、技術が一巡したアルミフレームに
パーツデザインに優れたカンパニョーロのヴェローチェのコンポを組み合わせたタイプを勧めます。
互換性を考えるとシマノのパーツでという意見も多いようですが、最低限のクオリティを考えるとヴェローチェになります(ゼノンは微妙か)。
10万円を越えるのは、メーカーがその製品を実際にレースに使うと想定しているレベルを推定しています。
過酷なレースで耐える仕様であれば、一般ユーザーが長期に使っていても問題が起きる確率は低いでしょう。

住宅だとグレードのあるコンポーネントとしてのメーカー住宅はないです。外国からの参入もありません。
例外としては量産住宅の最初期のセキスイハイムのM1があげられます。
http://renovation.inax.co.jp/archives/038hayashi/038-summary.html
個性的な建築をつくる象設計集団の代表のひとり、富田玲子さんが自宅に選んだ製品ですが、
今はこのような「スッピンで勝負」できるような大量生産商品はありません。

住宅メーカーがつくれないなら、建築家がつくればいい。
そこに自分の立ち位置があるのではないかと思いました。
それは難波和彦さんの「箱の家」や無印の「木の家」に似ているスタンスかもしれませんが、
設計者が変われば、価値観、感性、能力もかわるので、自分ならではの「スケルトン(下地)」をつくっていきたい。

住宅は施主にとって、所有欲が少し満ち足りていない程度がちょうどいいのかもしれません。
坪70万円くらいで、設備はそぎ落として、将来的に可能性のある魅力ある空間は最大限確保する。
最初からばりばりにつくりこむ必要はない。あとは住みながら変えていけばいいのです。
それが楽しいものですし、家族や人生というものは常に変化するものです。

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