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2008年5月12日 (月)

白の家

立ち読み&斜め読みですが「建築のしくみ」という本が出ています。514hdsl5aa24

近代現代住宅4例をセレクトし、RC壁構造、RCラーメン構造
鉄骨造、木造について、構造模型やCGをつかって構成を分析しています。

セレクトされた住宅は、住吉の長屋(安藤忠雄)サヴォア邸(ル・コルビュジェ)
ファンズワース邸(ミース)白の家(篠原一男)です。
近代建築の超名作と日本の住宅を同列に扱うことに恣意性を感じますが、
住吉の長屋と白の家が名作であることは間違いありません。

「住吉の長屋」はとてもわかりやすい原型住宅で、
建物の長手方向を3等分して真ん中を中庭とし、
その中心にブリッジを設けて、強引に思えるほど等分にこだわったそれは、
ドナルド・ジャッドの作品を思わせるほどドライな、
それでいて全体が対称形になることで迷路性、ひいては呪術性まで獲得しています。

一方、わかりづらいのは「白の家」です。
ぼくは作者の篠原一男のファンなのですが、この住宅は今年「篠原一男/住宅図面」
という書籍を購入するまで、仕組みを把握していませんでした。

まず名前ですが、訳すと「House in White」となるそうで、
「House of White」ではありません。
氏の作品名には共通してどこか詩的な雰囲気が漂いますが、これは最もシンプルにして不思議。

次に構造ですが、木造なのに屋内に露出する構造柱は中心の1本だけ。
正方形の外壁からのスパンは5mとなっていて、ここらへんはさすが
東京工業大学助教授(のちに教授)の設計と言えるかもしれません。
しかも単純に田の字型に梁を渡すのではなく、中央の柱から
正方形プランの4隅まで120×270という大断面の合掌を斜めに渡しています。
そしてその合掌を支えるように、円柱の途中から方杖が出ています。

「白の家」の前後に発表される「花山の家」シリーズでは
この方杖と円柱を露出していて、空間に非日常性を与えています。
一方「白の家」以前の「から傘の家」では、
屋根の構造材を露出して、建物全体の仕組みを表現しています。

「白の家」の驚くべき点は、1.5層の吹き抜けで空間の大半を占める
「広間」の天井がフラットなことです。
それによって円柱から生えた方杖部分も隠されてしまっています。
さらに部屋の形状も正方形ではなく長方形です。
そこでは全体の正方形平面や方形屋根の持つ秩序や、
円柱の中心性というか、その構造的存在意義さえ消し去られています。

なんというひねくれようでしょう!
構造の美しさに執拗にこだわりながら1本の柱を残して最後に隠してしまう。
近代建築でよく唱えられた「内部と外部の整合性」を思い切り無視しています。

この家が設計されたのが1964-5年。
モダニズムに異議を唱えてロバート・ヴェンチューリが有名な「母の家」を
つくったのが1963年ですから、篠原一男の先見性には目を見張るものがあります。

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