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2016年4月 5日 (火)

ハードとソフト

商業建築というのはシビアなものです。どんなにハードがよくてもソフトがダメだったら

あっという間に閉館に追い込まれる。ぼくは2番めに務めた事務所でそれを目の当たりにした。

愛知県知立市にギャラリエアピタ知立店という大きなショッピングセンターがあります。

これのパチンコ・スロットKEIZが入っている別棟には当初、アミューズメント施設があった。

ジャイアントスクリーン、シネドローム360、ターボライドと体験型の映像施設3つを

メインとし、中央のロビー空間には物販や飲食も設け、施設名はアミスタと呼ばれていた。

こうした施設は日本には当時まだディズニーランドくらいにしかなかった。

それをアメリカのベンチャー企業と伊藤忠商事が組んで、倒産前のヤオハンの新施設の

一部に売り込みました。ぼくの所属した事務所はデザインコンサルとして関わった。

その時、視察でエンターテインメント施設の本場のラスベガスに行きました。

そこでの体験は素晴らしかった。観客の待機ゾーンから既にストーリーは始まり、

スクリーンからの掛け声で観客はいつの間にかその世界に引きこまれている。

ただ単に見るのではなく、参加したような気になる仮想体験施設と言っていい。

今では3Dスクリーンが登場し、観客席内にも仕掛けが設けられ、より強力になっていますが

当時、それがない状態でそのレベルにまで達していた。さすがアメリカと思いました。

一方でぼくはそのベンチャー企業のつくったソフトは竣工間際まで見ることがなかった。

同じアメリカの企業だからと楽観的になっていたのかもしれません。

ぼくらはとにかく施設のデザインに全力を傾けていました。

が、オープン直前に見た試写会でぼくは呆然となった。全くつまらないのです。

ストーリーも工夫もほぼないようなもので、ただ映像に合わせて椅子がガタガタ動くだけ。

そこで一気に目が覚めました。この施設は失敗する。映画のつまらない映画館に客は来ない。

果たしてその予想は的中し、おそらく2年も持たなかったのではないか。
それまでかけたおそらく億単位のカネが回収しきれずあっという間に飛んでしまった。

運営はヤオハンでしたがアミューズメント施設に関しては全くの素人だったし、

施設的には別世界感を出すためにクローズドな造りにして入場料を取ったのが裏目に出た。

パチンコ店に業態を変えたあと、ヤオハン本体の業績も悪化して倒産することになります。

ただ実はハコを作るというのはそんなたいしたことではない。それは一種のお祭りであり

ご祝儀が出たりもする。職人や専門家も多く、場合によっては手弁当で作業がお願いできたり、

最近はネットでのクラウドファウンディングという資金集めの手法もある。

問題はソフトで、商品であったりサービスであったり運営や広報などのノウハウがないまま

オープンしてしまうと悲惨です。店舗には毎月賃貸料がかかるし人件費だってある。

土日の2日がもし満員になっても、残りの5日がガラガラだと辛い。

店は第一印象というのが大事なので、できれば最初から全力で集客したい。

運営しながら考えるなど悠長な時間はかけられない。

一度通り過ぎる癖がついた客は2度と戻ってはきません。

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