書籍・雑誌

2016年8月 1日 (月)

あの日、僕は旅に出た

旅行人を立ち上げた蔵前仁一さんの半生記が文庫化されていたので読んでみました。R0015400

漫画描きがイラストレーターになり、旅人、執筆者、編集者を経て社長にまでなる。

基本的に強い意志があったわけではなく、ただ流されてきただけだったとおっしゃってる。

その半生はジェットコースターのようで、最初はスリルがあって面白いなとか思ってたのが

ループやらコークスクリューやらで振り回されて、もういいよ助けて!ってなり、

ようやくスタート地点まで戻ってきてほっとした、と比喩するとわかりやすいか。

ぼくがバックパッカーの海外旅行をしたのは1987年、1991−2年、1995年の3回で、

それ以降は返還前の香港やドイツのミュンスターの美術展に行ったりはしましたが

いずれも短期間で、実質的には1995年の旅が最後だったと言っていい。

その時にケニアをまわり、もしかしたらジンバブエかマダガスカルに行くかもと

思っていて、参考にしたのが旅行人の前身の遊星通信のコピーと旅行人初のガイド

ブックであるアフリカ旅行情報ノート(写真)でした。

ぼくはその旅で引退してしまったので、旅行人は1冊も読んだことはありません。

単行本はゴーゴーアフリカと旅のグは買ってそこどまりでしたが、本書を読んで

興味を持ち、旅行人最終巻のバックナンバーをポチってみました。楽しみ。

本書を読む限り、蔵前さんは意外と批判精神があり神経質な方なのかと推測します。

終盤は読むのが辛く、一緒に仕事したいかというとちょっとそれは遠慮するかも。(笑)

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2016年6月26日 (日)

クライマーの山野井泰史と妻、妙子による2002年のギャチュンカン北壁挑戦を扱った61lrctidal_sx350_bo1204203200_

沢木耕太郎によるノンフィクション。

ギャチュンカンで凍傷で指を失うくだりは山野井さんの著作で読みかじっていました。

おそらく垂直の記憶。本書はその翌年に発表されています。

山野井さんは本書で一般に知られたというメリットはあった。では沢木さんがこの本を

書いた理由はなんだったのだろう?

山野井さんはぼくと同年生まれ。情熱大陸にも取り上げられたその姿は拝見したことがあり、

印象はというと変人。いかにも人とうまくやれそうにないタイプ。

ふたりの人となりは30分もの映像があれば誰にでもわかってしまう。

取材相手の映像が一般に出回ることで、伝説化することは失敗してしまった。

この映像は沢木さんの想定外の出来事だったのではないか。山野井さんはエベレストへの

取材登山を断ったと本書にはあるし、表に出る可能性は薄いと踏んだのではないか。

が、これだけ情報が発達した今、生ける伝説というのはほぼ存在し得なくなっています。
そのため、壮絶な内容にもかかわらず、本書からは凡庸な印象しか残りません。
もともと登山のジャンルは凄惨な描写が多いものだし。

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2016年6月23日 (木)

狼は帰らず

登山家、森田勝の伝記です。森田は1937年生まれ。ぼくの親の世代に当たります。51y4apbvdwl_sx352_bo1204203200_

森田が夢枕獏の小説、神々の山嶺の主人公のモデルになったこともあってか、

この本は1980年に出版されて以降35年にも渡って読み継がれている。

森田は戦後日本アルピニズムの発展期に立ち会いますが、エベレストで同行した長谷川恒男や

加藤保男のような輝かしい記録は残していない。むしろ人間的強烈さが起こした事件が

のちのちの人々に記憶として継承されたようです。

この本の著者は森田を徹底して突き放して見つめます。幼少期のトラウマを抱え、

直情的で自己中心的で、空気が読めないへたれ。そんな性格から周りの人が

去っていく様子も描かれています。

しかし物語が後半に入り、舞台が海外に移ると森田の周囲の評価はガラッと変わる。

うってかわって相手を思いやる人間味あふれた人物に描かれますが、なぜこうも

変わったのかは本書内では触れられていません。

ただ組織とは合わない根本的な性格は変わらず、K2ではアタック隊から降り、

最期は冷静に考えれば行かなくてもいい危険な岩壁で遭難死を遂げることになる。

そこに見て取れるのは有名になりたい、見返してやりたいという我欲の強さ。

ただそれに冷静な判断力を伴わず、最後まで空回りを続けてしまう。

もうひとつは引き際の悪さ。これは我欲の強さと連動していると思いますが、

加齢によって体力が衰えてると実感してそのままやめてしまう人と、あともうひとつと

続けてしまう人がいる。森田は後者だった。

幼少時に十分な愛情が得られず、承認欲求が高まってしまった人は、家族を持つと

落ち着くケースが多いと思いますが、ここでも森田は例外だった。

後世に名を残す人にはこうしたタイプが意外と多いのかもしれません。

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2016年6月 4日 (土)

圏外編集者

編集者であり写真家でライターでもある都築響一さんの新刊。81dnkpvyffl

自らの編集者人生を振り返り、今や昔の出版業界に苦言を呈しています。

曰く、特別なことをしてきたわけではない。誰も目を向けない普通のものに注目しただけ。

で、いろいろ言う割にこの本は最近のタレント本と同じような聞き書きです。

全文口語体で読みやすいですが内容が詰まっているとは言いがたい。手抜きな感じがするし、

最後になってわかるのですが、この本は都築さんの有料メルマガの宣伝のために書かれたみたい。

メルマガねえ。個人的には一方的に膨大なデータを送りつけてくるのはどうかと思います。

出版に未来がないのは確かですが、佐藤秀峰さんがオンラインの漫画サイトを開いて

決して成功していないのも含めて、ネットで食べていく方法はいまだに確立されていない。

この本でけなされているまとめサイトのほうが現状ではよほどうまくやっていると思います。

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2016年5月25日 (水)

ドキュメント単独行遭難

めったに行かない図書館で、まだ文庫化されていない羽根田治さんの単独行遭難を読んできた。 41tguuqf6zl_sx339_bo1204203200_

まさにぼくが最も身近な近年の事故事例が7つ、詳細に描かれています。遭難者の第一人称で書かれて

いるので、リアルで迫力があり圧倒されます。

読んだのは両神山と徳本峠の事例。両神山は難所ですが中津川林道からの八丁峠に近く

徳本峠はMTBツーリングブックにルートが紹介されていて、ともに身近な印象があった。

しかしそんなところでも生死に関わる遭難事故は起きている。

ともに滑落による遭難で足首に重篤な怪我を負うことでビバーグを余儀なくされますが、

登山届を提出していなかった。現場で救助を待つのですが、徳本峠のケースでは

翌日偶然登山者に発見されましたが、両神山では2週間救助がなかった。

両神山のケースでは本当に死んでもおかしくなかったと思います。実際救助にあたった際には

足首が腐乱して死臭が漂っていたそうな。助かったのはまだ30前後と若く、体力があった

からではなかったか。

事故は必ずしも危険なところで起きているわけではない。どんな状況でも事故に遭う

可能性はある。問題は事故が起きた時どうするか。一番大事なのはやはり登山届です。

これが出ていれば遭難翌日にはヘリが来る可能性だってある。

それ以外は、食料を多く持つ。防寒具になるものを持つくらいしかやることはない。

自然の前ではひとりの人間というのは無力です。リスクを完全になくすのは不可能。

それをわきまえてぼくらは山に入るべきということでしょう。

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2016年4月26日 (火)

食卓のない家

1979年に発刊された円地文子による小説。連合赤軍による事件をベースにしたフィクション。51uefeyzlol_sx373_bo1204203200_

学生の頃に買った文庫本を30年ぶりに読み返してみました。内容は覚えてなかった。

基本は今のぼくとほぼ同い年の大手メーカーの研究者である男とその家族の物語。

長男が山岳ベース事件に関わり逮捕されるという設定。その件でマスコミから親として

糾弾されるも、親が謝る筋合いはないときっぱり断る信念のある人物。

その手負いの獅子のような姿に心を揺さぶられ、二人の女性が引き寄せられ、

読み終えてみればプラトニックな島耕作とでも呼べそうな大衆小説。

出てくるのは主人公への協力を惜しまないいいひとばかり。男性ウケを狙ったか。

親は親、子は子と情を排して割り切ることで家庭は崩壊し、妻は精神を病んで入院し

夫と姉の関係を邪推して自殺してしまう。一方で長女は事件の影響で結婚話が破談に

なるが後に復活。風来坊だった次男とともに結局は父親の理解者となる。

協力者は弁護士の先生やら大学の教授やら。高校や大学での知人という設定ですが、

団塊世代の親の代ですから数少ないインテリと言っていいでしょう。

つまりはもともと恵まれているのである。大企業に勤め結婚して3人の子供がいる。

僕らの世代だとまだ辛うじて理解できますが、今の若い人がこれを読んだら

おそらく現実味のない夢物語だとしか捉えられないでしょう。ぼくから見ても、

家庭を壊したと言いながら、結局血のつながりや人情とかに頼っていて甘い。

この物語のベースとなった世界から約半世紀。当時はおそらくリアリティのある

ファンタジーという位置づけだったのでしょうが、今やその前半部分がまるごと

吹き飛んでしまっている状況かと。食卓という言葉からしてほとんど死語ですし。

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2016年3月 1日 (火)

十六歳のオリザの冒険をしるす本

ぼくの学年で言うと2つ上の劇作家、平田オリザさんが16歳で自転車で世界をまわった紀行文。

ぼくは単行本をAmazonで購入して、こちらは長ったらしい題名になっているのですが省略。

平田さんは本書でも書かれていますがいわゆるサイクリストとは微妙に違う。

ただ手段として自転車を使っただけで、列車やバス、飛行機のみでの移動も多い。

ロサンゼルスから始まりアメリカ横断は自転車で。ロンドンに飛んで西欧諸国は

網の目のように走り回るも、ギリシャ、トルコ、エジプト、インドでは自転車は一切なし。
途中エジプトでは両親が飛んできて、ローマでは日本のテレビ取材を受けたりしている。

これで自転車で世界一周といえるかは微妙ですが、この本は冒険記ではない。

これは湧き上がる若い自意識と西欧の歴史、社会文化との出会い。その摩擦の記録と言うべきか。

文章の部分部分に友人との手紙の内容を挟んでいるのも特徴で、彼らもまた戸山や新宿高校に

通い、官僚を目指し東大を受験するなど、やはり自意識が高い人達が多いようです。

その手紙のやり取りを見るとどこか上から目線。この本は2010年に文庫化されていますが、

47歳の平田さんが16歳の青臭い自分を肯定するとは、随分自分が好きなんだなあ。

この本は最初は勢い良く読めるも、トルコあたりで放浪が始まると観光パンフレットの

ような説明になり、最後の方は旅が長くなったせいか、自分の考えや感性が絶対のような

記述が増えてきて、読破するのに時間がかかりました。

この後、著者は自らの大学受験を本に書いたそうですが、さすがにもう興味がわかない。

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2015年12月16日 (水)

Amazon依存

2007年から2011年までは一桁前半、2013年までは一桁後半を推移していましたが

2014年に18件、2015年もここまでで14件の注文をしています。

内訳としては書籍が多く、2012年は5冊、2013年からは毎年8冊購入しています。

希少本の割合が高いですが、そればかりではない。

地元の書店は各駅の啓文堂ばかりになってしまい、基本は皆同じ品揃えで、

新刊本が発売日に店頭に並ぶ確立はおそらく50%を切っている。

笹塚の紀伊国屋まで行けば確立は上がりますが、確実ではない。

するとやはり送料無料に惹かれてAmazonとなってしまいます。

啓文堂も紀伊国屋も書店としては強者なので申し訳なくも思わないからなおさら。

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2015年7月 2日 (木)

宇宙飛行士が教える地球の歩き方

著者のクリス・ハドフィールドはカナダの宇宙飛行士。3度の宇宙飛行の経験があり
今は引退して講演活動などを行ってるようです。現在56歳。

TEDでの講演のヴィデオがあります。この本からの抜粋になりますがシンプルで良い。
https://www.ted.com/talks/chris_hadfield_what_i_learned_from_going_blind_in_space?language=ja#t-636747

書籍の方は9歳で宇宙飛行士を目指してから引退まで、膨大な量の情報が詰まっています。81qlna1cnel_2
特にプロローグは宇宙飛行士として選ばれるまでの努力と結果が凝縮していて、
まるでシンデレラ・ストーリーです。本当に事実なの?と疑ったくらい。

それ以降は宇宙飛行士としての地上と宇宙での生活、トレーニングや事件事故など、
とにかくあらゆるものが饒舌に語られています。ページにして実に362ページ分。

少し躁が入っているのでは?と思うくらい常に前向きな思考で、
出来る人ゆえの性か、読者を置いてけぼりにするところもある。愚痴や弱音は一切なし。
そのせいかコロンビア号の事故についてはほとんど触れられていない。

まあ、物語の最後の長期宇宙生活からのリハビリでは人間的な面も見えては来ますが、
こんなあらゆる能力の天才の語る教訓など僕らの役に立つか、というのが正直なところ。

それより謎に包まれていた宇宙飛行の詳細な実態が記されているのが参考になった。
フリーフォールでもダメなぼくのような人間はソユーズの帰還カプセルには乗れない。
船酔いもしやすいので、おそらく無重力の生活も苦痛でしょう。

宇宙飛行のハイライトである船外活動の魅力もわかったような気がしました。
それは言ってみれば壮大な空間体験で、地球上で全く味わえないというわけでもない。

宇宙空間のきれいな風景をを埋め込んだ著者によるMTVがあります。自分好きなんだろうな。

2015年6月30日 (火)

日本の最も美しい図書館

エクスナレッジから出版された日本の最も美しい図書館という本に、最初の事務所で手がけた1
日本橋図書館が取り上げられていました。これに関する過去日記はこちら。

http://studio-blank.cocolog-nifty.com/blog/2015/02/post-17d8.html
http://studio-blank.cocolog-nifty.com/blog/2015/02/post-9067.html

エクスナレッジの出す本のタイトルは大袈裟なので有名で、必ずしも最も美しい
ラインアップではありませんが、そうそうたる作品の中でピックアップされているのは確か。

最初の事務所はアカデミー=メディアとの接点がなく、おそらく過去に取り上げられたことはない。
ただエクスナレッジ社編集部には知人がいるので、ブログを見て推してくれたのかもしれません。
もしそうでしたら、ありがとうございます。

こうしたかたちででも世に出て、興味を持って見に来られる方が増えれば、
設計者にとってこんな嬉しい事はありません。今、主に関わっている住宅では
施主のプライバシーを尊重し、基本的には所在地を明かさないのでなおさらです。

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