建築

2016年12月12日 (月)

照明

今発売されているCasaBrutusの特集は照明です。

建築で構造や設備といったものはつきものですが、表現の抽象化に走った

モダニズムにおいては基本的に隠蔽する方向に傾いていた。

今でもその延長にある多面体建築やミニマリズムにおいては隠されます。

一方で、あるものはそのまま見せればいいという考えもある。

その最たるものはパリのポンピドーセンターでしょうが、

原点は1949年竣工のイームズ自邸なのかもしれない。

この洗練された実用建築とでも呼ぶべき名作はひとつの呪縛となった。

ここではイサム・ノグチのあかりが使われていますが、

ペンダントライトの希望を拒否したn邸においてもあかりならOKだったかも。

http://www.archdaily.com/66302/ad-classics-eames-house-charles-and-ray-eames

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2016年11月17日 (木)

断面で読み解く世界の建築

断面パースと言うと今だとアトリエ・ワンがよく自作の解説に使っていますが、51c5zxvpqkl

この本には、世界の63の建築の断面パースが掲載されています。

ケースに差がありますが、構造や設備がどうなっているかわかるものも多い。

建築作品は一般に、平面図と写真で理解されます。断面図はあっても構造などは

省略されていることが多い。よくここまで調べ上げたなと感心します。

おそらく今までこうした書籍は存在しなかったのではないか。

63
のケースのうち、知っていたのは41。著名な建築が多いですが、

著者がNYで活動する建築家とあって、日本のメディアに載らない建築が目立ち、

しかしどのケースもなかなか興味深い。

本書では断面の操作を7種類に分類し、それぞれのケースとして実作の断面を載せている。

実際にはひとつでなく、幾つかの手法を組み合わせた例が多いのですが。

この分析がどれほど有効かは評価の別れるところでしょう。

難をあげればやはり1方向の断面パースのみで全てを説明するのは無理がある。

直交方向の断面図を追加するか、小さくても平面図を載せるほうが現実的でしょう。

ともあれ、個人的にはソーク生物研究所、ブレゲンツ美術館、ロンシャンの礼拝堂

シアトル中央図書館といった建築の仕組みが見られて満足です。お勧め。

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2016年8月22日 (月)

ゲーリーとコールハース

ポストモダンムーブメントがなかったことになる、その終焉を乗り越えた

現代の巨人ふたり。特に素材の扱いとか最後にモノに落とし込んでいく

センスに共通点が見られたりしますが、実質は対極にある存在です。

ゲーリーはあくまで現物のかたちにこだわりますが、コールハースにとって

それはあくまでひとつの解答であって、それを目指している訳ではない。

どこまで本当かはわかりませんが、少なくともそういうポーズはとっている。

コールハースは出自がそうであるように、アーティストというよりジャーナリスト

です。創造というよりは編集作業。 状況を分析し、常にロジックで物事を進め、
批判的立場を取ることが多く、結果として挑発的で、時に悪意さえ含む解答を示す。

その姿勢はとてもクールでかつて日本でも熱狂的に受け入れられ、当時の妹島さんは
常にコールハースの作品集を携えて参照していた、という噂すら聞いたことがあります。

が、今はそのブームも去り、CCTV以降は目立った情報が入ってきません。もちろん

シアトル中央図書館やカーサ・ダ・ムジカが傑作であることに疑いはないものの、

近年、総力をあげた特集が組まれたゲーリーとは明暗がはっきり分かれています。

なぜか。ゲーリーは社会から自由になることを望んで実現し、かわりにブランド化され

商品となることで消費された。

一方でコールハースは社会にコミットすることにこだわった。資本主義の波に乗ると
言いながら、あくまで消費されることを拒んだのは彼自身なのかもしれません。

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2016年8月11日 (木)

生き残る建築

建築は壊されたら負けです。

建築史というものはその当時の研究者や編集者が修正しながら引き継いでいくものです。

それが、現物を見たことがあるひとが生きているうちはいいのですが、

現物が壊され、見た人も亡くなってしまうと、もう判断のしようがなくなる。

ぼくは旧東京都庁を見ていますが記憶は薄れ、いま評価しろと言われても難しい。

写真と同時期に竣工した他の建物を参考にするしか方法はなく、情報量は全く足りない。

旧赤坂プリンスホテルでさえ、もうだいぶ忘れかけています。

他の例で言えば、ぼくはシルバーハットのなかに入ったことはない。道路からちらりと

見えたのと、隣のマンションの屋上から俯瞰しただけでもう現存しません。

平面図も写真もあるのですが、ぼくはシルバーハットをわかっていない。これは確実に。

建築の歴史書に出てくる建物は95%が現存していると言っていいでしょう。

それはパルテノン神殿やギザのピラミッドなどまで含めて。今ならCGであたかも

復元したような映像はつくれるでしょうが、これでも全然情報量不足。

設計図を元に復元という手もあるにはありますが、そんな金をかけるくらいなら

保存したほうが余程いい。現場を見ての設計変更などがあった可能性があるし。

シルバーハットも移設したものがありますが、中庭や床など明らかに別物です。

壊してしまったら終わりなのです。そこを本当にわかって意識しているひとは

少ないのではないか。DOCOMOMOも対象を増やすのではなく、むしろ絞り込んで

必ず残すべきものに資金も含めて注力すべきだと思います。

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2016年7月21日 (木)

樹脂材による建築

隈研吾さん設計のPlastic Houseなる住宅があります。2002年竣工。(写真)R0015357

ぼくが先日書いた軽い建築というのは素材としてはカーボンファイバーが

最有力だと思っているので、さすが時代の潮目を読むのに長けたひとだというか。

これ、構造は従来からある鉄骨造です。建築では今のところカーボンファイバーは

構造材としては認められていない。ただ坂さんの紙管のように実験してデータの

裏付けが取れれば可能性はあるはずなので、そこまでのこだわりはなかったのか。

建材としてFRPグレーチングというのは1990年前後から存在しています。

ぼくも床のハッチで使ったことがあるのですが、これが樹脂なのに重い。

合板でつくっても重量差はほとんどなかったのではなかろうか。

加えて変色と破損という問題も抱えています。透明色を選ぶと短期間で紫外線で

黄色くなってしまう。写真のプラスチックハウスではちらりと見える茶色っぽい

塔屋がそれで、手前のバルコニー枠と外壁は竣工後に白く塗装し直されています。

破損に関しては同じ隈さんによるエスコルテ青山で全面的に使われていますが、

踏み面のジョイント周りが竣工直後からバキバキに割れていました。

納まりの問題なのかもしれませんが、不特定多数のひとが歩く場所には向きません。

変色は着色材であれば解決しますが、問題は主にジョイント方法とその強度か。
モノコックが理想ですが、焼かなければならないので大きさに限界はあるし、
カーボンを巻く型枠も大きくなるので、標準化しないとコストも掛かる。

建材としては比較的軽い木にとってかわるのはまだだいぶ先になりそうですね。
航空機で比較的大きなものをつくっているので参考になるかも。

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2016年7月20日 (水)

国立西洋美術館が世界遺産登録

経済効果としてはプラスに働くのでいいことだと思います。あの辺鄙な富岡製糸場にさえ1024pxnational_museum_of_western_ar

ひとは殺到しました。

ただこれは近代建築の巨匠コルビュジェというひとと、その世界への影響例として

拾われただけで、建築自体がコルビュジェの作品群の中で、また建設された当時の

日本建築界で影響力のある特筆ものだったかというと微妙です。

コルビュジェは現地視察として事前に1度しか来日しておらず、竣工した現物は見ていない。

彼の事務所が描いた図面は基本設計図面のみで、それも寸法すら記入されていなかった。

立面図では屋上部分の工作物が省略されていたり、概算見積もりもできない状態。

実施設計と現場管理を担当したのはかつてコルビュジェの事務所に在籍した

前川國男、坂倉準三、吉阪隆正の3人の建築家で、わざわざモデュロールから

ひとつひとつ寸法を起こしていったそうな。

当時はラ・トゥーレの修道院が平行して動いていたのでコルはおそらくそっちに注力していた。

ただ西洋美術館が特殊な例だったわけではなく、コルビュジェは構想にこだわるタイプで

仕上がりにはさほど興味はなく、現地事務所に任せるというケースは多かったらしい。

ただ西洋美術館に関してはコルビュジェはきれいに仕上がりすぎるのを危惧したという

話もあります。当時から日本の施工業者の技術レベルは高かった。案の定、竣工後

日本国内からもコルビュジェの当時の作品にしては迫力がないとの評が上がりました。

そうした事情は周知されていたため、西洋美術館に行く=コルビュジェの建築を体感する

という認識は今でも建築界では一般的ではありません。

西洋美術館の竣工当時は丹下健三の香川県庁舎や菊竹清訓のスカイハウスで伝統論争や

メタボリズムなどの動きが始まっていた。近代建築は日本でも既に次のフェーズに

入っていて、西洋美術館が特段のインパクトがあったとも思えません。

なのでぼくから見ると今回の決定は微妙な印象があります。西洋美術館は

阪神淡路大震災後に大規模な免震工事が行われ、オリジナルが損なわれないように

細心の注意が払われましたが、一方で日本の近代名建築は次々と壊されています。

DOCOMOMO
にはもっと頑張ってもらいたい。

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2016年7月19日 (火)

デザインの大きな流れ

デザインというのは基本的に技術革新とともに変化していくものです。R0015350

エレクトリックデバイスについて言えば、軽く、小さく、薄く、シンプルに。

iPhoneが大きくなったりと例外はありますが、大きな流れはこんな感じでしょう。

建築は20世紀初頭に技術革新があり、鉄筋コンクリート、空調、エレベーターが

発明され、やはり軽く、薄く、シンプルな方向にデザインは展開しました。

これはいわゆるモダニズムの言語で、技術的革新が目に見えづらくなった現代でも

この流れは続いていて、妹島さんがそうだし窪田勝文さんもその文脈で評価されてる。

もちろん、カーン、ボッタ、安藤やズントー、内藤といったあえて重い方に戻るような

動きもあって、その作品を否定するつもりはありませんが、歴史として見ると

それらはあくまで特異点であって、連続性は見いだせない。

構造家の故ピーター・ライスの言葉。

建築家は課題に対してクリエイティブに対応するが、エンジニアは本質的に革新性に満ちた方法をとる

おそらくこれからも構造家の担う役割は大きくなる。そして建築家は歴史に名を

残そうとしたら、軽く、薄く、シンプルであることを意識せざるを得ないでしょう。

坂さんの紙管の建築も物理的に軽いし、いずれは建材も、倒壊しても人的被害の出ない

ような軽いものが開発されるのではないかと思います。

写真は故ヤン・カプリツキーによるプロジェクト。早すぎましたね。

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2016年7月13日 (水)

現代の茶室

今から30年前、こういうお題でアイデアコンペが行われました。覚えている方はR0015340

少ないのではないかな。ぼくは学生時代にアイデアコンペは2つしか出していませんが、

このコンペは強烈に印象に残った。

それはぼくの案がという話ではなく、2コ上の大学院の先輩が2等に食い込んだから。

しかもそのロシア構成主義とデ・スティルが軽快に混ざり合った詩的なオブジェクトは

どう見ても1等案より優れていたから。

1
等案は持ち歩き可能な組み立て茶室というアイデア勝負のもので、よく見るというか

よく見なくても実物は破綻しています。が、この茶室のロケ地は誰の目にもわかる

伊東豊雄の中野本町の家。著名建築家お墨付きという印象に打って出た。

審査員の評は歯切れが悪い。黒川紀章に至っては1等案が勝ったのは女性だったから

からでは、とまで言っている。1等案の作戦にまんまと引っかかったとしか思えない。

この2等案の作者、藤本裕之さんは他のアイデアコンペも入選しましたが確か佳作。

このコンペで1等とっていれば人生変わったかもしれないのに全く不運です。

氏は結局清水建設の設計部に進み、今も在籍しているようです。

ぼくと就職のタイミングは一緒だったので状況はわかりますが、就職活動中は

バブル直前で、有名どころの求人は全く無かった。1年遅かったら違ったのですが。

ぼくはこのコンペに結果が出る前に、2等案のドローイングの一部に大学の製図室にて

遭遇して思った。全くかなわない。あれだけの才能がありながらもったいない。

氏に限らず、頭が良くて腕のあるデザイナーというのは毎年山のように輩出されています。

氏と同年に学部を卒業した工藤和美さんは東大院に進み、シーラカンス設立に参加している。

つくづく建築家として大成するには才能だけじゃダメなんだなと思った次第。

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2016年7月 9日 (土)

行けない聖地

世界には見に行きたいけど治安などの理由で見に行けない都市、建築というのがあります。Samara_spiralovity_minaret_rijen197

ぼくの場合、イラク、サッマラーのミナレットやアルジェリアのガルダイア、スヴァネティなど。

特に中東や中米あたりはなかなか情勢が安定しません。

ぼくがよく海外をまわっていたのは1992−1995年頃でしたが、イラクはフセイン政権下で

湾岸戦争に突入していた。今は米軍は撤退しましたがISの侵略を受けている。

アルジェリアは世界で最もジャーナリストが殺される国と呼ばれていて、軍事クーデターから

内戦に発展した。最近でも武装勢力により日本人が多数殺害される事件が起きています。

ついこの前にはバングラデシュのダッカで同様の殺害事件が起きました。

同国も不安定化してきているのかもしれません。ダッカには近代建築の巨匠ルイス・カーン

による国会議事堂などがあり、ファンにとってはぜひとも訪れたい聖地なのですが。

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2016年7月 3日 (日)

プライバシー

自宅隣の木造3階建て建売住宅がそのボリュームを現してきました。今までの経緯はこちら。R0015321

http://studio-blank.cocolog-nifty.com/blog/2016/03/post-891f.html

http://studio-blank.cocolog-nifty.com/blog/2016/03/post-edea.html

やっぱりでかいです。まさに壁。そして2階テラスとの距離が近い。

今は工事のひとが頻繁に行き交うので、サッシュを開放するのもためらわれます。

近隣説明用の図面によると開口部はさほど多くはなく、民法に基づいて目隠しの設置を

求めましたが果たしてどんな感じになるのか。2階床レベルがほぼ同じなのが気がかり。

さてこの目隠しですが、敷地境界から1m以内の範囲にある開口部が対象となります。

逆に言えば、1mセットバックすれば透明ガラスの全面開口の建物も建てられる。

先日に見学会があった住宅はまさにこれでした。東京の住宅密集地に3層分の

ドミノシステムのスケルトンを挿入している。壁は両脇に僅かにあるのみ。

傾斜地なので3階まで上がると隣の住宅の屋根越しに風景が広がります。

逆に2階の南面では隣地住宅の壁面が目の前に迫っている。1階に至っては完全に囲って

6台分の車庫になっていて、ピロティにする意味が全くなくなっている。

で、表題のプライバシーですが、この住宅の住人はカーテンや目隠しフィルムなどいくらでも

視線の調整は可能ですが、近隣にとってはそこまでオープンにされてしまうと、

自らの敷地内で目隠しをつけざるを得ません。つまり先にやったもの勝ちなのです。

ただ、実際に住み始めると近隣との人間関係が発生するので、あからさまに

オープンにするのが必ずしも正解とはいえないと思います。
もし自宅隣地の建物がそういう住宅だったらぼくは嫌だ。

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